アートフェア東京のプレオープンが本日(3月6日)からスタートした。
国内最大手のアートの祭典だ。
今後の日本のアート市場を占う試金石として重要なイベントとなるだろう。
具体的なそのレポートについてはまた後日に譲るとして、まずは現実の日本の現代アート市場がどんな状況にあるのかについて語りたい。
はっきり言って、日本のアート業界はまるで迷路だ。
問題があちらこちらに散らばっていて、解決策の出口が見えない。欧米はもちろん、韓国や中国といったアジアの周辺国と比べても、日本人がアートに費やす金額は驚くほど少ない。
世界のわずか1%という統計を見るたびに、まるでダイエットに失敗し続ける体重計の数字を見ている気分になる。
もちろん、富裕層の年齢構成といった、努力だけではどうにもならない原因もある。
しかし、それだけで片付けてしまうのはもったいない。まだまだ、日本のアート市場を広げる余地はある。
アートがもっと広く買われるためには、顧客の財布を開かせるだけの魅力が必要である。
要は、アートが他の商品やサービスと比べたときに「これが欲しい」と思わせるだけの理由を作らねばならない。
ここで求められるのは、まさに「コンセプト」だ。
この「コンセプト」という言葉、聞こえはかっこいいが、中身がないとただの風船である。
タグボートが目指すのは、その風船にしっかりと中身を詰め込むことだ。
具体的には、アートを持つことが単なる趣味やインテリアではなく、人生にとって大事な要素になるというストーリーを構築していく。
そのストーリーは、一部のアートファンだけに刺さるものではいけない。もっと幅広い層に届く、いわば「多くの人が共感するストーリー」を作る必要がある。
たとえば、アートは投資になりえるという切り口。
絵を買うことが株を買うのと同じくらい普通になるような世界を目指す。
これはただ「高く売れる」という話ではなく、アートが持つ文化的な価値や、それを通じて広がる人脈、ひいては人生そのものを豊かにするというストーリーだ。
これをSNSやウェブメディア、さらにはYouTubeなどを駆使して広めていく。タグボートは、まさにそのストーリーテラーとしての役割を果たしたいと考えている。
次に、アートの「体験価値」を高める施策だ。アートフェアやギャラリーで作品を見るだけではなく、実際にアーティストと話す場や、制作現場を訪れる仕掛けなど、五感で楽しめるアートの提供を目指す。
アートをもっと身近に感じてもらうためには、「見る」から「体験する」へのシフトが必要だ。
これができれば、アートはもっと特別なものから「生活の一部」へと変わっていくだろう。
そしてもうひとつ、大切なのは「情報の可視化」だ。
アーティストのインタビュー記事、誰でも分かりやすい作品説明、YouTube動画を充実させることはもちろんであるが、アート作品がどれくらいの価値を持っていて、どんな評価を受けているのかを、もっとわかりやすく見せる必要がある。
タグボートは、これまで蓄積してきたデータを活用して、アートの「見える化」を進める予定だ。
正直なところ、タグボートの力はまだ非力である。しかし、誰もやらないからこそ「我々がやる」という気概がある。
たとえるなら、小さな船で荒波に漕ぎ出すようなものだが、そこに挑む価値があると信じている。
これから少しずつ、タグボートが描く日本のアート市場拡大のためのストーリーと、具体的な施策を紐解いていこうと思う。
アートを買うことが特別なことではなく、もっと自然に、生活の中に溶け込むようになるために。次週以降、そのヒントを少しずつ語っていきたい。
2025年3月14日(金) ~ 4月5日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日3月14日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:3月14日(金)18:00-20:00
※3月20日(木)は祝日のため休廊となります。
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F